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現実:空想=3:7くらい

舞台の感想とか、思った事を素直に綴る。舞台って楽しい。人生って楽しい。

【舞台感想】劇団イキウメ「太陽」

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あらすじ

 

世界的なバイオテロにより人口は激減。

ウイルスによって、それまで営まれてきた人類の社会は破壊された。

 

それから数年、ウイルスに適応した感染者が現れ始める。彼らには共通点があった。

これまでの人類よりも高い思考能力・身体能力と頑丈な肉体を持ち、驚異的な治癒能力を持っていたが、太陽に当たることができない欠点があった。

彼らは自らを「ノクス」と呼び、独自の社会を構築し始める。

 

こうして人類は2種類に分断された。

新人類だとされる「ノクス」とそれ以外の人々。

ノクスになる方法も解明され、徐々にその数を増えつつある。

人類の中にはノクスに憧れて、自ら「ノクス」になりたがる者も出始めた。

 

ある日、長野八区で1人の人間が1人のノクスを死亡させる事件が起こる――

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もう本当に本当に本当に楽しみにしていた公演。劇団イキウメオリジナルの「太陽」!!!蜷川幸雄さんが数年前にこの原作を用いて「太陽2068」を上演して、その作品を見たときから、オリジナル版を観たいと強く思ってました。

もうね、最高。最高としか言えないよ!

 

イキウメさんの作品をいくつか見てきて、その中で共通してあると感じていたものが「感情派」と「理論派」の人達のやりとり。太陽はそれが大きなテーマになっていて、「昼(キュリオ)」=感情派と「夜(ノクス)」=理論派と別れてしまった世界を描いている。

 

鉄彦はノクスに憧れるキュリオの少年。自分はキュリオだからロクな教育を受けていないことにコンプレックスを持っていながら、キュリオ(骨董品という意味)と呼ばれると怒りをあらわにしてしまう。自らキュリオを否定しながら、それでもキュリオである自分を馬鹿にされると感情的になってしまう、とても人間らしい少年。

一方、森繁は生まれた時からノクスの少年。(ノクスの大半はキュリオとして生まれ、一定の年齢に達した後、薬品投与でノクスになる) ノクスは太陽に弱く、夜しか外を歩けないため、キュリオに興味や憧れを抱いている。客観的に自己分析する能力に長けるが、人間の複雑な感情を察することができず、事実や真実をストレートに鉄彦にぶつけてしまう。

そんな真逆な2人と、その周囲の人々を中心に話は進んでいく。

 

まるでアニメ作品のような設定なのに、実際に舞台でみると妙にリアル。異なる人種、だけど「人間」。なぜリアルに感じるのかというと、実際の人間関係で近しいものを感じるから。「感情的な人」と「理論的な人」、周りにいませんか?私の周りには両者居て、相容れない節がある。この世界のように、本当に違う人種なんじゃないかと思うくらい、「結論」までに達する過程が違いすぎる。

 

この作品は結果的に、鉄彦と森繁が「昼は鉄彦、夜は森繁が車を運転して、一緒に旅に出よう。24時間フル稼働できる俺らは最強だ」という所で終わる。自分の身の回りに置き換えながら観る事ですごいメッセージ性になる。「お互いの足りない部分を補い合えば完璧以上になる」そういわれているように感じた。

ストレートに響くメッセージが心地いい!

物語を観る理由って、これに尽きる。舞台じゃなくても、映画とかドラマとか書籍でも。非現実な世界から、現実の自分の意識が変わる。伝えたいメッセージが強く響く物語は本当に素晴らしい。

だからこの作品が好きなんだろうな。

 

太陽の中で一番切なくなるシーンは、結(キュリオの少女で、ノクスを嫌っていた)が、キュリオの愚かさに絶望して、ノクスになる道を選択し、キュリオの父親に別れを告げるシーン。

人間臭く悩んで悩んで、現状に不満がありながらも必死で努力して変わろうともがいていた少女が、ノクスになった途端に「悩んでいたのがバカみたいだ」と言った。

感情的で、優しくて、一生懸命だった娘の面影が一切なくなって、まるで別人になってしまった時の父親の苦しさや悲しみが切なかった。ノクスになって良い生活をしてほしいと望んでいたのは父親なのに、いざノクスになった結があまりにも別人で。

このシーンは役者さんの技量が本当に素晴らしかった。ノクスとキュリオって服くらいしか違いはないのだけれど(ノクスは小奇麗な恰好、キュリオは小汚い服を着ている)キュリオからノクスに切り替わった事が鮮明に表現されていた。結役の清水葉月さんが素晴らしい。このシーンは本当に泣けた。キュリオ特有の「割り切れない感情」が苦しかった。

 

大筋のテーマ部分も突き刺さるし、その周辺で繰り広げられる「田舎特有の対立」「親子兄弟の絆の形」などの部分も一切手抜きされてなく突き刺さる。

こんなに見ごたえがあって、感情を揺さぶられる作品、そうそうない。

ものすごく好きです。これからもイキウメさん見続けます。

 

また、今年この作品が映画化もされてます。映画版は「田舎特有の対立・しくみ」の方に焦点が当たってて私的にはちょっと物足りなかった。ノクスとキュリオの違い部分があまりわからなかった。でも、舞台版を観てから映画版も見ると、より深い楽しみ方ができるのではないかな、とは思う。映画版だけ見て、面白いっていう人少ないんじゃないかな・・・(すみません)